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3-12 意味深な言葉 2

last update Last Updated: 2025-05-09 21:35:58

「お久しぶりですね。朱莉さん」

京極は朱莉に近づくと声をかけた。

「はい。お久しぶりです……」

すると京極はニコリと笑みを浮かべた。

「っぱり朱莉さんはいつ見てもお綺麗ですね」

京極のその言葉に朱莉は思わずカッと顔が赤くなる。

(ど、どうして京極さんはいつもそんなことを言うの……?)

それなのに京極は朱莉が蓮を抱いている姿を見ても、何も質問してこない。ついに朱莉は我慢出来ず、自分から言おうと思い、顔を上げた。

「あ、あの……京極さん……!」

すると京極が口を開いた。

「朱莉さん。少し座って話しませんか?」

「え? は、はい……」

この公園の敷地内にもドッグランがある。朱莉と京極はドッグランに正面のベンチに並んで座り。2匹の犬が遊んでいる様子を少しの間無言で眺めていた。

「どうですか? 朱莉さん。ここの公園は」

ふいに隣に座る京極が声をかけてきた。

「はい。とても素敵ですね。小さな噴水もあるし、ベンチも沢山……それに……」

目の前には滑り台、ブランコ、砂場、スプリング遊具がある。

「子供用の遊具も充実してるでしょう?」

何処か意味深に京極は言う。

「は、はい。そうですね……」

朱莉は蓮をギュっと抱きしめると覚悟を決めた。

「京極さん……あの、この子は……」

「とても可愛いお子さんですよね。……男の子ですよね?」

「え? な、何故それを……?」

「ああ。それは……」

京極は笑みを浮かべた。

「だって着てる服が全て水色じゃないですか? 女の子なら大抵ピンクですよね?」

「あ……そ、そう言うことですか……」

「ええ」

「京極さん。それでこの子は蓮という名前で……」

そこまで言いかけると京極が止めてきた。

「いいですよ、最後まで言わなくても。僕にはこの子の両親が誰か知ってますから。だからあえて朱莉さんから無理に聞き出そうとも思っていません」

「京極さん……」

(きっと、京極さんはレンちゃんのお父さんとお母さんが誰か見当がついているんだ。だから何も聞かないのね)

朱莉はこの段階で、またしても京極に大きな貸しを作ってしまったように感じられた。

「朱莉さん。子育てはどうですか? 楽しいですか?」

突然京極が尋ねてきた。

「はい、楽しいです。毎日ちょっとずつ成長してきて……最近はご機嫌だと声も出すようになったんですよ。手足をばたばたと動かすしぐさは本当に可愛くて……」

気付けば、朱
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  • 偽りの結婚生活~私と彼の6年間の軌跡 偽装結婚の男性は私の初恋の人でした   <終章> 安西航 2

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